常に部下の中に自分より能力の高い人がいると自覚せよ

人の上に立つということは、決して簡単なことではありません。私自身、介護事業で経営者として約10年ほど現場と関わってきた経験があります。その中で、常に考えさせられたのは「人をまとめることの難しさ」でした。

介護の現場では、スタッフの多くが女性であり、40歳以上の方がほとんどでした。人生経験も豊富で、価値観や考え方がしっかりと形成されている世代です。そのため、若い人のように指摘すればすぐ改善する、というものでもなく、「何を言ってもあまり変わらないのではないか」と悩むことがありました。人間がすでに完成されているからこそ、下手に言葉を選ばずに指摘すると、かえって反発を招いてしまうこともあり、言い方や伝え方には非常に気を遣いました。

また、業務の効率化を目指そうとしても、時には壁にぶつかることがありました。例えば、最年長のスタッフの中にはスマホ操作が苦手な方も多く、業務報告や記録をスマホで統一することが難しい場面がありました。結局、紙媒体での記録を併用するなど、効率だけを追い求めず、スタッフ一人ひとりの事情や得意不得意に合わせて柔軟に対応する必要がありました。

そんな中で、ある経営学者や著名なリーダーの本を読み、強く心に残った言葉があります。「人の上に立つ者は、常に部下の中に自分より能力の高い人がいると自覚せよ」という教えです。経営者や管理者は、すべてにおいて部下より優れている必要はない、むしろ部下の能力を見抜き、その力をどう引き出すかがリーダーの役割だという考え方に、深く納得しました。謙虚さを持って、スタッフを尊重することの大切さを改めて感じたのです。

こうした経験を振り返ると、リーダーシップとは「上から命令する」ことではなく、「相手の個性や能力を理解し、より良い方向へ導くための支援者になる」ことだと思います。介護現場での10年間は、私にとって人間関係や組織運営の深い学びを得る貴重な時間でした。

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